LC-MS装置のイオン取込細孔の電圧設定について
お伝えしている通り、以前のホームページに掲載していたブログを、こちらに再度掲載しています。
今回から、LC-MS装置のイオン取込細孔の電圧設定や、その電圧を変えた時にマススペクトルにどのような変化が現れるかについて解説した記事を載せていきます。
お仕事でLC-MSをお使いの方で、イオン取込細孔の電圧設定を意識しておられる方はどれ位いらっしゃるでしょうか?イオン取込細孔は、ESIやAPCIなどの大気圧イオン源において、大気圧で生成したイオンが真空領域に入っていく時に最初に通過する細孔です。下の図をご参照下さい。
ESIソースの概略図
メーカーによって名称は異なり、cone, orifice, transfer tube, heated capillaryなどと呼ばれています。その後に続く差動排気部にイオンを送り込むために、数十V程度の電圧が印加されています。イオンを後ろから押す所謂リペラー電圧的な役割を果たしますが、その電圧の最適値は、イオンのm/zに依存します。その依存性というかイオンのm/zによってどの程度最適電圧が違うかは、メーカーや機種によって異なります。メーカーや機種毎にデフォルトの設定値があり、多くの化合物はデフォルト設定値のまま測定してもそこそこのシグナル強度が得られますが、極端に分子量が小さい、あるいは大きい化合物については、そのイオンを通すための最適値がデフォルト値から大きく外れる事もあります。
最近の多くの装置では、このイオン取込細孔を含め、複数の関連するパラメーターをオートチューニングできる機構が備わっていますが、その際にチューニングの対象とするイオンのm/zを設定できるようになっていると思います。
オートチューニングを使っても勿論良いですが、オートチューニングを使うまでもなく、この電圧をちょっと変えるだけでシグナル強度が劇的に変わる場合があります。より良いLC/MS分析のために、この辺りも一寸意識して使ってみて下さい。