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質量分析ってなに? その1

リニューアルしたホームページのブログに、以前のホームページで書いていたブログ記事を再掲載していますが、本当の基本的なところに戻って、質量分析とは? という辺りから、ブログ記事を書いていきたいと思います。最初は化学的な内容が多くなると思います。

 

 最初に、質量分析という技術が社会でどのように役立っているかについて、簡単に説明します。少し大げさに書くと、ありとあらゆるところで役立っていると言っても過言ではないと思います。例えば環境、大分前に話題になったダイオキシンによる大気汚染や、環境ホルモン、シックハウス症候群などは、その原因物質は質量分析で測られます。例えば薬学や医学、医薬品の開発過程において、質量分析は必ず使われています。質量分析で診断できる病気もあります。例えば洗剤や化粧品、その成分分析には質量分析が使われます。例えば食品、海外から輸入される農作物に残存している農薬の量を測るのは質量分析です。そして事件や事故、その原因調査のために質量分析が使われる事があります。

 このように、一般的には余り知られていない質量分析という技術ですが、実に多くの場面で私たちの生活に役立っています。

 

さて、それではここから質量分析について話を進めていきたいと思います。

 

質量分析とは、原子や分子をイオン化して、その質量を測る事であり、その時に使う装置を質量分析計と言います。質量分析と言う言葉は全く聞いたことが無くても、原子や分子と言う言葉は、聞いたことがあると思います。原子は、物質を構成する最小単位です。分子は、複数の原子が結びついて出来ています。原子と原子の結びつきの事を、結合と呼びます。私達の身の回りには沢山の物質がありますが、その多くは分子から出来ています。

ここで、原子や分子の質量について確認しておきたいと思います。最も簡単で質量の小さな原子は水素原子で、その質量は約1です。炭素原子の質量は12、酸素原子の質量は約16です。しかし、水素には質量が約2や約3の原子もあります。これらは同位体と呼ばれます。天然に存在する同位体の比率は正確に測定されていて、それを同位体の天然存在比と言います。水素の場合、質量約1の水素原子が最も多く天然に存在し、その割合は99.9%以上です。なので、通常水素の質量はというと、約1という事が多い訳です。各元素の同位体の中で、天然存在比の最も大きな同位体を、主同位体と呼びます。炭素や酸素にも同位体が存在します。炭素の主同位体の質量は12、酸素の主同位体の質量は約16です。質量分析においては、同位体を区別できるデータが得られる事が殆どなので、同位体を理解する事は、質量分析を扱う上でとても重要です。

原子と似たような言葉に元素があります。元素は同位体を含めた原子の種類の事で、原子は同位体を区別したものです。

次に分子の質量について確認します。分子の質量は、分子を構成する原子の同位体の組み合わせによって変わってきます。例えば水分子。水分子の分子式はH2Oと表され、2個の水素原子と1個の酸素原子が結びついて出来ています。水素原子と酸素原子が全て主同位体で構成される水分子の質量は、約18となります。お酒に含まれるエチルアルコールの分子式はC2H5OHと表され、水素・炭素・酸素が全て主同位体の場合の分子の質量は約46です。これらの数値は、統一原子質量単位というものが基準になっていて、簡単に言うと分子1個あたりの質量を表す数値です。これらの分子をイオン化して、その質量を測る事が質量分析であり、その装置が質量分析計です。

 

その2では、イオン化について説明しながら、今回の内容をもう少し詳しく説明していきます。

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