リン酸塩緩衝液を用いたLC/MS受託分析
エムエス・ソリューションズでは、数年前から不揮発性緩衝液条件でのLC/MSを可能にする”ソルナックチューブ”を開発、主にアルテア技研株式会社様を通じて販売しています。
大分前になりますが、リン酸緩衝液を用いたLC/MSの受託分析を実施しました。
条件はリン酸アンモニウム、50 mM以上の通常より高濃度の条件でしたが、目的の未知成分ピークのマススペクトルが得られました。
ソルナックチューブにはCFAN, OOAN, CFOOの3種類があります。CFANは陽陰両イオンを吸着するタイプ、OOANは陽イオンだけ吸着するタイプ、CFOOは陰イオンだけ吸着するタイプです。今回はリン酸アンモニウム条件だったので、リン酸だけ除去すればよく、CFOOを用いる事が出来ました。アンモニウムイオンは、60 mM程度であればそのままESI-MSに導入しても問題ありませんので。今回使った条件がリン酸ナトリウムやリン酸カリウム系だったら、結果が得られたかどうか分かりませんでした。リン酸ナトリウムやリン酸カリウム系の場合はCFANを使う必要があり、NaイオンやKイオンを除去する時に、一緒に目的成分も吸着してしまった可能性があると言う事です。目的成分の陽イオン性が低ければ、NaイオンやKイオンと一緒に吸着してしまう事はありませんが、これはやってみないと分かりませんので。
リン酸塩緩衝液を用いる場合、これは勿論目的化合物に依りますが、リン酸ナトリウムやリン酸カリウム系をリン酸アンモニウムに変更しても、分離挙動は変わらない事が多いです。これは、リン酸側の緩衝能が支配的である場合が多いためです。
ちなみに、
”リン酸アンモニウムならそのままESI-MSに導入しても大丈夫なのでは?”
と思う人がいるとすれば、それは大きな間違いです。リン酸アンモニウムはESIに対して非常にイオン化効率が高いので、そのまま導入してしまうと、余程濃度の高い成分でない限り、イオン化抑制を起こして検出されなくなるでしょう。また、リン酸が後々にまでコンタミしてしまい、あとのイオン源クリーニングに途轍もなく長い時間がかかります。
リン酸塩以外にも不揮発性イオン対試薬用のソルナックチューブや、TFAやトリエチルアミンなど揮発性だが分析の邪魔になる添加剤を除去するソルナックチューブもあります。このような移動相条件でのLC/MS受託は弊社の得意技です。ご興味あればお気軽にご相談ください。