LC/MS技術指導:LC装置の内部容量の最適化
先週、鳥取へLC/MSの技術指導に行ってきました。
抱えておられた最大の問題は、LC/MSで得られたクロマトグラムピークの幅が大きい事でした。
溶離条件はイソクラティック、分析種は特にイオン性が高いという訳ではなく、難しくは無いという印象でした。
溶離液条件が合わないのかとも思いましたが、この装置は、MS側はメーカーからの購入品、LC側は組織内から中古品を譲り受けたとのこと。
これは他の場所でも経験した事ですが、MSに接続する事を想定しないで使われていたLC装置は、配管の内径や長さがLC/MSに使うには大き過ぎる場合が多いのが現状です。
また、カラムの内径に対して合わない移動相流量を設定しているケースもあります。例えば、分析用の内径4.6 mmのカラムに対して、移動相流量だけESIに合わせて0.2 mL/minに設定してしまうケースです。ご存じの方が多いと思いますが、内径4.6 mmのカラムの最適な移動相流量は1 mL/minです。それに対して0.2 mL/minの移動相流量に設定すれば、理論段数は大幅に低下してしまいます。
今回も、その辺りから疑ってみました。
先ず、カラム内径と移動相流量については問題ありませんでした。移動相流量が0.2 mL/minなのは前もって確認済みで、カラム内径は2.1 mL/minでした。
次に配管の内径と長さ、一番目に付くLCとMSの接続配管は、内径0.15 mmで問題ありませんでしたが、他がダメでした。ポンプからカラムまでの配管に、内径0.75 mmのものが使われていました。さらに、サンプルループも、200 µLのものが使われていました。これらはカラムの前の容量増加につながるので、グラジエント溶離条件では問題が小さい場合もありますが、イソクラティック溶離条件では致命的です。
更に更に、LC装置内の配管接続を詳細に見ると、移動相流量に対して大き過ぎるスタティックミキサーが使われていました。そこで、ふと思ってポンプを確認したら、そのポンプは低圧混合タイプでした。低圧混合ポンプは、ポンプの手前で複数の溶離液がプレミックスされるため、ポンプ出口でのミキサーは基本的には不要です。その事を、そのLCを以前使っておられた方はご存じなかったようです。
その辺りの配管等を全て最適化して、同じ条件で測定を行ったところ、クロマトグラムのピーク幅は1/5以下にまでシャープになり、当然感度も向上しました。
LC/MS装置において、LCからMSまでの配管は目立つので気にされ易いですが、LC装置内部の配管は気付かれない事があるようです。
配管やその他の部品、LC/MSに適する状態になっているかどうか、是非確認してみてください。
もしご自分たちで分からないようなら、お気軽にご相談ください。現場に伺って一緒に最適化作業をお手伝いします。